記事: 第三章 ここが漁師の夜明けぜよ
第三章 ここが漁師の夜明けぜよ
そんなこんなで遂に素潜り漁師になれた訳ですが、待っていたのは厳しい現実でした。
まず、素潜りで値段の付くような魚を獲るのは一苦労です。
自分の限界ギリギリの水深に挑戦し、横隔膜が痙攣するまで息を止めることは日常茶飯事。
夜の素潜り漁はもっと危険です。イセエビは岩の穴の奥深くにいます。
動画では暗くて伝わらないのでぜひ読みながら想像してみてください。
-深夜、真っ暗闇の水中。
手に持つのは小さな懐中電灯と魚を突くモリだけ。
水深7mほど潜り、海底にあるちょうど車のタイヤ幅ほどの岩の割れ目に体を突っ込むと『完全に光の遮断された空間』があります。
その空間の岩肌に2Lペットボトルほどのイセエビがびっしりと張りついているのです。
簡単に捕獲しようとすると、厄介なことに物凄い力で暴れるので、鋭利なトゲが手袋を貫通して手に刺さり激痛が走ります。
イセエビの動きを力づくで制した上で入ってきた穴から抜け出し、ようやく水面へと上がれるのです。
昨年だけでも素潜り漁師の仲間が2名亡くなりました。
もし、あなたの周りに素潜り漁師の知り合いがいるのなら「死にかけたことはある?」と聞いてみてください。普通では考えられないような経験を彼らは無数に話してくれるはずです。
命懸けの漁をやってるというよりは、もはや「偶然生きてるだけじゃないの?」と聞き返したくなるほどのエピソードがぽんぽん飛び出してきます。
厳しい現実はそれだけではありませんでした。
限界まで息を止め、真っ暗闇の中命懸けでとってきた魚を競りに出します。
すると、信じられないような金額で次々に魚が落札されていきます。
普段は高級魚と言われる魚がなんと1匹150円。
命と天秤にかけた魚たちがジュース1本分の値段しかつかないのです。
いえ、売れるならまだ良いです。
誰からも買い手が付かず、せっかく獲った魚が自分の元に戻ってくることすらありました。
僕の落ち込んだ様子を見て、漁師たちは「そんなもんだよ」と笑っていましたが、決して目の奥は笑っていません。
お世話になってきた漁師の人たちの『悲しみのこもった笑顔』を見て、「僕に出来ることは何かないか?」自然とそのように考えるようになりました。
どうにか漁師が稼げる方法は無いか?
そもそも魚が売れない原因って?
「魚を買ってくれない※仲買人(※魚を競り落とす人)が悪いのか?」というとそういう訳でもないです。
そもそもコロナ禍で観光客が減り、飲食店も休業に追い込まれている中で「どこに魚を売るんだ」という話なのです。今は魚が売れる市場が無いのです。
漁師がどれだけ頑張ろうが、どれだけ味のいい料理を作ろうが売り先がなければ話になりません。
さらに今の日本の水産業界は中抜きだらけの虫食い構造です。
漁師が魚を獲ってきてから皆さんの食卓に並ぶまでに、まず、魚を仲買人が買い、仲買人がまたその仲買人から買い、またその仲買人から…と延々と売り買いが繰り返され値段が釣り上がった状態でスーパーへと並び、皆さんの食卓へと並ぶのです。
漁師から150円で買われた魚が、東京に着く頃には2000円ほどになっていることもざら。
だから、地方の道の駅の魚は安くて新鮮で、都会のスーパーの魚は「高いから買えない」になってしまうのです。
一見複雑な問題が山積みですが、辿り着いた答えはシンプルでした。
「そうか、ないのなら作ればいいのか」
「漁師兼Youtuberの僕が、自分で直接販売して、魚が適正な価格で取引される市場を作ってしまえばいい」
そう思うと、魚突きに出会ってからのこれまでの出会いや感動が全てつながっているような気さえしたんです。
そこからクラウドファンディングから加工場の立ち上げまで数千万の借金を背負って、それこそ素潜り同様命懸けで走って来ることができました。(クラウドファンディングのご支援本当にありがとうございます!)
ホームページでは漁師たちが命懸けで獲ってきた水産物を販売しています。
水産加工場の立ち上げからこのオンラインショップの立ち上げまでは動画にまとめましたのでそちらもぜひご覧ください。
最後に、皆さんには子供の頃からの夢はありますか?
諦められない夢はありますか?
僕は子供の頃に思い描いた「素潜り漁師になる」夢は叶いましたが、今ではもっと壮大な夢を描いています。
"漁師の夜明け"がこれから描く物語は沖永良部島から始まり、鹿児島、九州、日本、そして世界と、水産業界そして海の未来を変えられると信じています。
いえ、変えてみせます。
夢を追いかけている人、夢を諦めてしまった人、夢を探している人。
僕と一緒に新しい物語を描きませんか?皆さんのお力が必要です。
SNSのシェア、コメント、お友達に「こんな面白いの売ってるよ」と言ってくださる全てが夢への励みになります。
皆さんの夢を乗せて"漁師の夜明け"は世界を明るく照らします。
ここが漁師の夜明けぜよ。